視察レポート2014

視察レポート

子どもたちの命を守る手洗いを、世界に広めたい。2010年にスタートしたサラヤ100万人の手洗いプロジェクトは、今年で、5年目へ。
最初の3カ年の成功をウガンダの全国レベルに広げていくことを目標にしたつぎの3カ年がスタートしています。

Report1石けんで手を洗う人の割合は、14%から、27%へ。

SARAYA 100万人の手洗いプロジェクトは、5年目を迎え、現在は、ウガンダ全域で行われている全国手洗いキャンペーンを支援。ラジオやポスターを通した手洗いの促進活動や、学校での手洗いを普及させるための教員へのトレーニングなどを推進しています。

今回の視察のひとつの大きな目的は、プロジェクトをスタートした2010年に訪れた北部をもういちど視察すること。2010年当時、乏しかった衛生環境がどう変化したかを確認したいと考えたのです。

  • ユニセフ・ウガンダ事務所でのミーティング
  • プロジェクトの進捗状況が伝えられた

プロジェクトチームは、初日、まずユニセフ・ウガンダ事務所へ。ユニセフおよび現地NGOスタッフが、プロジェクトの成果を教えてくれました。学校での取り組みが進んでおり、150校の300人の教員のトレーニングを実施。また、学校で、手洗いを学んだ子どもたちが、自分の家で、手洗いを親に教えるケースも多く、「大人が直接親に言うより、子どもたちから言ったほうが効果が高い」と言います。
2007年時点でトイレの後に石けんで手を洗う人の割合は、14%でしたが、この割合は現在27%まで向上しています。
成果が、すこしずつ全国に広がっているようです。ユニセフ・ウガンダ事務所でのミーティングの後、今回の旅の目的、北部に向けて出発です。

  • SARAYA EAST AFRICA代表 宮本和昌
  • 北部に向けて出発

Report2手洗いの大切さを、子どもたちへ。子どもたちから、大人たちへ。

北部で最初に訪れたのは、KIROMBE(キロンベ)小学校です。この小学校は、手洗いの普及がうまく進行している模範的な学校で、下痢など感染症も減っていると言います。
手洗い場で熱心に手を洗う子どもたちに、「なんで手を洗うの?」と聞くと、ばい菌で下痢になるから、と答えてくれました。

  • 手洗い場で熱心に手を洗う子ども
  • 地元の村の人たちによるお芝居
保健センターの分娩室の様子

続いて、地元の村の人たちによるドラマグループが、衛生に関するお芝居を披露してくれました。手を洗わずにものを食べると腹痛になり、きちんと病院にいかずに亡くなってしまう、という物語を通して、手洗いの大切さを伝えています。また、こうした劇を通して、子どもたちは学んだことを家で家族や兄弟に伝えています。

小学校の後、近くの保健センターにも立ち寄ると、まだまだ設備が整っていない様子がうかがえました。手の消毒剤も見当たらず、保健センターの衛生環境の改善の必要性を改めて痛感します。

Report3再会で感じた、確かな変化。

次に訪れたAcholi Bur小学校は、2010年にプロジェクトチームが訪れた場所。PADER県は、20年以上にわたる紛争の影響が残り、いまでも、手洗い場やトイレの不足など、多くの課題を抱える、ウガンダの中でも厳しい状況の地域です。
そんな中でも少しずつ成果は出ていました。2010年には破壊され使えなくなっていた手洗い場も、新しく作られ、使われていました。

  • 2010年の手洗い場の様子
  • 2014年の手洗い場の様子

Mr. Okidi Moses校長先生にインタビューをしました。
「全国手洗いキャンペーンがはじまって、学校の先生がトレーニングを受けました。その先生が他の先生もトレーニングし、子どもたちにも手洗いをしっかり教えるようになりました。新しく入ってくる子どもたちにもずっと教え続けています。かつては手洗いを忘れる子どももいましたが、Tippy Tapを作ってからは、子どもたちは楽しいのか、よく洗うようになりました。楽しんで使っているようです。子どもたちの健康状態も改善して、年々病気も減っています。」

さらに、2010年にプロジェクトチームが来たことを、覚えている男の子Onen Polycarpくん(15歳、6年生)にインタビューすると、「使える手洗い場が増えて、もっとたくさんの子たちがちゃんと手洗いをするようになりました。手洗い場やトイレがない家と見かけると、どうして作らないの?と聞いたりしてます。できるときには頼んでみて、いくつかの家では手洗い場やトイレを作ってくれました。」と答えてくれました。
小学校の校長室には、プロジェクトチームが来たときの写真がいまでも大切に飾られていました。

次に、AMILOBO小学校へ。この小学校も、2010年の視察で訪れた小学校です。学校に到着すると、大雨で崩れ落ちたトイレが目に飛び込んできました。昨年の9月に大雨があったと言います。保護者たちが協力して新しいトイレを自分たちの力で作っていました。

  • 大雨で崩れ落ちたトイレ
  • 新しく作りはじめられたトイレの様子

保護者代表の Okello Francisさん(39歳)にインタビュー すると、「とにかく学校の環境を良くしたいのです。子どもたちに病気になってほしくないのです。(紛争から避難しているとき)下痢やコレラがたくさん蔓延しました。
排泄物から広がる病気の怖さを私たちはよく覚えています。だからなんとかしたいんです。」とその想いを教えてくれました。
Opira Richard Ben校長先生によると、「2011年から改善が進んできています。不十分な衛生設備が原因の病気が減り始めたのです。下痢なども減りました。」と、手洗いの成果が出ているようでした。

プロジェクトチームの前回の訪問を覚えていた男の子がこの学校にもいました。
Okot Michaelくん(17歳、7年生)です。
彼は、2010年にプロジェクトチームがきたときに、「助けてくれるんだ」と思ったそうです。「手洗いキャンペーンのあと、手洗いの設備を使うようになって、生徒は下痢や寄生虫病にかかることが前と比べて減ったと思う」と教えてくれたOkot Michaelくん。将来の夢は、ユニセフで働くこと、だそうです。

  • 保護者代表の Okello Francisさん
  • Okot Michaelくん

Report4そして、新たなはじまり。

最終日は、ムコノ県St. Joseph小学校を訪問。
この小学校は、県の手洗い推進校のひとつに選定されている学校です。衛生クラブのメンバーは、赤いバッヂをつけ、メンバーであることを誇りに思っているようです。
衛生クラブのメンバーは、手洗いタンクに毎日水をいれたり、設備のメンテナンスを行ったり、熱心に活動をしています。
きちんとメンテナンスして大切に使えば、設備も長く使える。モチベーションの大切さを改めて感じます。

  • 子どもたちに手洗いを教える衛生クラブの
    メンバー
  • ユニセフ・ウガンダ事務所でのまとめの
    ミーティング

その後、首都カンパラのユニセフ事務所に戻り、まとめのミーティング。
SARAYA EAST AFRICA代表の宮本氏と、ユニセフおよびNGOスタッフの間で、多くの意見が交わされました。
ウガンダの衛生環境をよくしていきたい、という気持ちはSARAYA EAST AFRICAもユニセフも同じ。
今後のさらなる連携の可能性を探るミーティングになりました。

そして、2014年3月7日、100万人の手洗いプロジェクトがきっかけとなって、はじまったSARAYA EAST AFRICAでは、ウガンダで製造したアルコール手指消毒剤の初出荷を迎えました。

2010年、はじめてウガンダを訪れたときに感じた、この国の衛生をなんとかしたい、という原点はそのままに、サラヤ100万人の手洗いプロジェクトは、そしてSARAYA EAST AFRICAの挑戦は、これからも続いていきます。

  • ウガンダで製造したアルコール手指消毒剤の
    初出荷の様子
  • ゴンベ病院のルレ院長にウガンダで製造した
    アルコール手指消毒剤を届ける宮本氏