視察レポート
SARAYA衛生商品の売り上げの一部で、ユニセフのアフリカ ウガンダでの手洗い促進活動を支援する「SARAYA100万人の手洗いプロジェクト」がスタートしてから一年。
プロジェクトの成果を確かめるために、視察チームは2011年3月20日、アフリカ・ウガンダに赴きました。
Report1簡易的な手洗い設備TIppy Tapと、手洗いアンバサダー。
視察1日目、ユニセフ・ウガンダ事務所でのミーティングの後、いよいよ出発です。まず、KIBOGA県へ。Kambugu小学校では、今回のプロジェクトによって、簡易的な手洗い設備、Tippy Tapが設置されていました。Tippy Tapは、壊れたときも、自分たちでなおせる簡単なしくみ。プロジェクトを通じて、こうしたTippy Tap数十万基の設置が支援されています。
力強い女性の校長先生の説明で、活動の進捗とこれからの要望を聞いた後、少し恥じらい気味の低学年の子どもたちがTippy Tapの実演を素敵な歌にのせて見せてくれました。
そして、次は、HOIMA県Buhimbaへ。この町では、手洗いアンバサダーによる、Tippy Tapのつくりかたの講習会が開かれていました。40県13500の村でこうした手洗いアンバサダーが任命されており、プロジェクトでは、その活動を支援しています。(Tippy Tapの石けんに、半分に切ったペットボトルがかぶせてあるのは、ヤギ対策で、ヤギは石けんを食べてしまうらしいです)
Report2-1盛大な世界水の日のイベントへ。
視察2日目は、HOIMA県で開かれていた「3月22日 世界水の日」の盛大なイベントを訪れることができました。HOIMA県の主要部族は、ニョロ族です。パレードやダンスは、さすがにアフリカの息吹を感じるエモーショナルなパフォーマンスでした。
元気ハツラツ、学生のマーチングバンドに始まり、ニョロ族の民族ダンス、手洗いを題材にした寸劇と続きます。この寸劇では、疾病の元凶を医学的にとらえ、一番大切で基本となる予防手段、手洗いをすることが啓発されているようでした。最後に優秀な手洗いアンバサダーの表彰で締めくくり。一等賞の賞品は、自転車でした。このようなキャンペーン実施地区では、村人たちに着々と手洗いの意識が向上していることが伝わってきました。
一度身につけてしまえば、やらないと気持ち悪くなるのが衛生習慣。まず、はじめてみることが大切なのです。
イベントの最後には、SARAYAスタッフが紹介され、東日本大震災の被災状況について説明をしてくれました。
続いて、イベント参加者全員で黙祷が捧げられました。視察チームも突然の心遣いに感動しながら黙祷しました。
Report2-2マスメディアで手洗いの習慣を広げる。
プロジェクトでは、ウガンダ国内で、テレビやラジオを活用した大規模なマスメディアキャンペーンも実施し、石けんによる手洗いの普及につとめています。街の中心部にあるFMラジオ局 「Liberty FM」を訪ねると、「手洗い」についてDJとリスナーが賑やかなコミュニケーションを展開する特別番組がはじまりました。
さすがDJ、「手洗いってカッコいいんだ!!」と感じさせます。国を挙げての手洗いキャンペーンテーマは、「HANDS TO BE PROUD OF」(石けんと水を使って洗った手こそ、誇らしい手になる!)、これがウガンダ全土に漏れなく拡がっていくことが最終目標になるのだと思いました。
Report2-3ウガンダの豊かな自然に出会う
視察3日目、ウガンダ北部へ向かうため、マーチンソン滝 国立公園を抜け、アルバート湖へ流れ込むヴィクトリア・ナイル川を渡ってウガンダ北部に移動するルートを取りました。
凸凹の未舗装道路を、四輪駆動車で疾走。このとき幸運なことに今まで会えなかった野生動物たちに出会えました。アフリカゾウ、カバ、ウガンダキリンにも対面。国立公園の緑の大平原を眺め、ウガンダの豊かな原風景を見たような気がしました。
Report3-1一年間での成果を実感。大きいのは意識の変化。
アチョリ族の暮らすPADER県では、去年支援の対象に選定されたAmilobo小学校を再訪。プロジェクトの支援によって設置された手洗い設備を確認し、校長先生を取材。新たに生徒によって組織された衛生クラブが活動開始していました。これはとても大きな進歩です。生徒たちは自発的に手洗い習慣を身に付けていました。
視察4日目、やはり昨年支援の対象に選定されたAcholibur小学校を再訪。生徒組織の健康クラブが活動を開始していて、衛生についての詩をみんなで朗読してくれました。校舎の前では、設置した手洗い設備を、児童たちが日常的に使っている様子も見かけることができました。説明してくれた若い男性教諭からも、ひしひしと熱心さが伝わってきました。
やっぱり大切なのは意識の変化。プロジェクトの成果を肌で感じることができました。そして、空路でカンパラへ。視察が終わりに近づいてきました。
Report3-2ウガンダでは、いまだ毎日375人の子供が亡くなっている、という事実。
※ユニセフ・ウガンダ事務所 プロジェクト年次報告書より
視察最終日、ユニセフ・ウガンダ事務所で、最後のブリーフィング。この国では、いまだに毎日375人の子どもが亡くなっていることや、その主な原因が下痢などであること、石けんを使った手洗いの普及が急務であることなどの説明を受けました。特に、ユニセフ ウガンダ事務所 副代表の「セレモニーから習慣に変わっていくこと、持続可能な活動にすることが大切」という言葉が印象的でした。
今回の視察では、多くの成果を感じることができましたが、まだまだ、この国の厳しい状況にあります。視察チーム一同、衛生分野の専門メーカーとして支援を継続する決意を新たにしました。また、忘れられないのが、訪れた先々で、震災に見舞われた日本を気遣う言葉をいただけたこと。現地と日本の"つながり"を確かめることもできました。
指標と出典 | 数値 |
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総人口(Projected mid 2006 population UBOS) | 2730万人 |
子どもの人口(Censu s 2002) | 1530万人 |
貧困ライン以下で暮らす人の割合(UNHS 2005/06) | 31% |
5歳未満児死亡率(DHS 2006) | 137 |
乳児死亡率(DHS 2006) | 76 |
妊産婦死亡率(DHS 2006) | 435 |
すべての予防接種を受けた生徒12〜23ヶ月の子どもの割合(DHS 2006) | 46% |
はしかの予防接種を受けた生徒12~23ヶ月の子どもの割合(DHS 2006) | 68% |
5歳未満児の発育阻害の割合(DHS 2006) | 38% |
5歳未満児の消耗症の割合(DHS 2006) | 6% |
BMI(体格指数)が18.5%未満の割合 | 12% |
安全な水を使える人の割合(UNHS 2005/06) | 68% |
トイレの普及率(WSPR 2007) | 52% |
小学校の出席率(DHS 2006) | 82% |
15〜49歳のHIV感染率(UHASBS 2004/05) | 6.40% |
ウガンダの主要な社会経済指標
Source : UDHS(ウガンダ人口保険調査)2006
ウガンダにおける乳幼児の主な死因は、マラリア、急性呼吸器感染症、下痢などで、予防可能かつ治療可能なものです。栄養不良や病気の背景には、保健、水と衛生設備、教育などの基礎サービスの質やアクセスが不十分であること、衛生習慣や保健に関する意識の低さなどが挙げられます。
Report4視察を終えて
今回プロジェクト二年目のウガンダを視察して、確実に手洗いの意識向上が進歩していることを確信しました。この国の豊かさに改めて驚かされ、かつ持続可能な支援とはどんなものかを改めて考えさせられました。これからも次年度に向けてみんなで頑張っていきたいと思います。
視察直前に起こった東日本大震災により、重苦しい気持ちで日本を出発しましたが、こちらに到着してからは、衛生や手洗いなどから社会を作り直そうとしている人たちを見て、逆に力をもらいました。日本に戻ってから、またさらにウガンダでの問題に向かっていけると思います。ありがとうございました。
海外事業部に所属し、いろんな国の食品工場や病院などの施設で手洗いの仕事をしてきましたが、今回初めて参加したこの視察時に各種コミュニティの状況を見て、「手洗い」が命に直結しているという感覚を初めて持ちました。これから立ち上げるサラヤイーストアフリカの活動にもつなげていきたいと考えています。
昨年と比べると、手洗いの施設や教育がかなり充実していますが、まだまだ習慣としてウガンダに根付いているとはいえません。今後このプロジェクトでしっかりとウガンダに手洗いの習慣を付けてもらいたいと思います。
今回初めてウガンダ視察に参加させていただきました。ウガンダでの活動の難しさを理解している者として、モデル地区となっている学校や地域で、思いのほか手洗いがしっかりと浸透していることに感心し、そして感動しました。手洗いがさらに浸透することで、子どもの健康などにどのような影響を与えていけるかを、来年もまたここを訪れて見てみたいと考えています。